コラム第3回  経験則

ご機嫌いかがですか?管理人です。

先日仲間と雑談していると、「経験則による個人的判断は、果たして推理たり得るのか」という話になりました。
今回は、これにまつわる小さなエピソードを紹介しましょう。数年前の出来事です。


自宅でそれまで10年間以上酷使して来たN社のエアコンが突然異音とともに停止し、その生涯を終えました。(合掌)真冬の事でした。私は奥に仕舞い込んだ石油ファンヒーターを久々に引っ張り出し、ひとまずは難を逃れました。頭をよぎるのは「次の夏はどうするか?」という問題です。知り合いの電気工事業者に聞いてみると、「総合的に考えると買い換えた方が得である」との事です。

しかし、私の心の中では生来の知的好奇心が目を覚ましました。推理ファンなら誰でも実験や考察が大好きです。(こんなの管理人だけか?)首都圏の都市部に夏の熱気がこもり逃げ場を失うという現象が、本格的に問題視され出した頃です。
エアコンを持っていない友人が、「最近の東京の夏の暑さは尋常ではない。扇風機を回すと熱風が襲って来る。パソコンの調子まで変になる」と嘆いていました。

冷房なしで生活するとどうなるのかな?
田舎ならまだしも、建物が極端に密集した都市では危険な香りがします。へへ。試してみる事にしました。胸が高鳴ります。(呆)

…そして非常に有益な結果を得ました。体感的な事についてはもちろん個人差はあるでしょうが、管理人宅の場合概ね次の通りです。

■窓から直射日光が差し込む早朝の時間帯を除けば、室温は外気温プラス2度前後。パソコン及び大画面CRTの放熱の影響もかなり大きい。(つまり屋外に出た方がまだ涼しい)余談だが、液晶モニタはどうしても好きになれない。

■いろいろ試してみたが、暑さ対策のメインとなる要素は、結局は「慣れ」が一番。私の場合、外気温32度までは全く平気になった。

■恐るべき事に、近頃は東京の外気温が35度を超える事も珍しくなくなった。私の出身地である九州よりはるかに蒸し暑い。湿度が異様に高い。

というわけで、一夏たっぷり大汗を流した後に到達した結論は、「やっぱりエアコン必須」でした。薄っぺらな机上の論理とは説得力が違います。(自慢)翌年の夏、久しぶりに新しいエアコンを買いに出かけました。

世間では省エネとかエコロジーとか地球に優しいとか、そんなキーワードが盛んに飛び交っていました。また、都市生活者は冷房の温度を高めに設定しよう!というCMも毎日のように流れていました。
各機の値札にはでかでかとスペックが表示されています。いかに電気代が安く済むかという点を第一にアピールしています。「消費電力わずか○○W!」とか誇らしげに書かれています。

アホちゃうか。冷房は冷えてなんぼじゃ。エアコンかけて相も変わらず暑苦しいままなら、むしろその方がエネルギーの浪費やないか。去年の私のように冷房なしで生活する方がはるかに賢いわ。

私も伊達にミステリ小僧を名乗っているわけではありません。物を購入する前には万全の下準備を済ませておきます。各社のカタログを取り寄せ、詳細に検討を重ねました。この時に思い出されるのが、それまで使って来たN社のエアコン「冷え冷えくん(私が勝手に命名)」の事です。
メーカーの謳っている「目安となる部屋の面積」は、実際に設置していた部屋の面積よりも少し大きくなっていました。店頭で一番よく売れている物より上位クラス(というか大型)の物で、これなら十分だろうと安心して買ったのですが、ちっとも冷えません。
私はどちらかというと冷え過ぎに敏感な方で、真夏でも設定温度を28度位にします。その私ですらはっきり「暑い」と感じるのです。N社といえば日本を代表する巨大メーカーです。私は技術力にも一目置いています。そこの製品がこうなのだから、現状ではこれが家庭用エアコンの精一杯なのだろうな…と理解しました。後に専門家に確認すると、やはりこの判断は正しかったと分かりました。
さらによく調べてみると、前記の「普通によく売れてるクラス」の物は比較的評価が高いそうです。

ふむふむ。つまり、テクノロジーの違いではなく、要は出力と部屋サイズのバランスの問題だな。両者は単純に比例するのではない。狭い部屋では、非力なエアコンでも(建築)構造的に冷え易いわけだ。ちょっと広めの部屋になると、普通のエアコンを単に大きくしただけでは不十分で、本格的な業務用でもない限り相対的にローパワーになるという事だな。
まあ仕方ない。次に買い換える時にこの教訓を生かそう。

…というわけで、それを生かす日がついにやって来たわけです。
店員に声をかけると、設置したい部屋の広さを聞かれました。6畳間と4畳半の仕切りを取り払った10畳半。鉄筋造り…等と律儀に解説すると、店員は最新型の、それも比較的小型の機種を勧めて来ました。

なるほど。寿司屋が一番儲かるのは玉子だ。高級なネタほど料金は高いが、どうしてもマージンが小さくなる。生憎だったな店員。お前はマニュアル通りに頑張ったが、その手には乗らない。私には大きな経験則がある。

私はその隣に陳列されていたM社の大型機を指差しました。「そっちの大きい方もらうわ」
販売価格はなんと3倍以上です。そもそもこのクラスの物になると、ほとんど買う人がいないのでしょう。どこの店に行っても割引対象にすらなっていません。
例によって「目安となる部屋面積」を確認すると…12畳用。以前不満だったN社の物と同じです。しかし、この10年間の技術革新を考え合わせると…ふふふ。これでピッタリだ。エアコンなんて、そうそう試して買う性格の品物ではありません。買ってからがっかりする人も多いでしょう。今回の私のように、貴重な経験則を活かして理想的な結果が出せる事は稀です。

後日、無事に設置工事も終わり、いよいよ試運転です。
季節はもう真夏です。外気温33度。いいタイミングだ。運転切換・冷房。設定温度・28度。スイッチON!

起動してから2分も経たないんですが…あの…寒いんですけど。冷え過ぎとかの問題ではなく、明らかに寒いんですが…。何かおかしいぞ。

慌てるな。取扱説明書をチェックだ!
何々?当機には低出力モードがあります。「電流切換」のボタンを押して下さい。…何だよ、脅かすなよ。たまたま出荷時に高出力モードになってただけじゃん。電流切換ON!

あのう…ほとんど変わらないんですけど。これ不良品じゃないの?

今度は設定温度を31度に。(この機種で冷房時に設定出来る最高温度がそれ)全然変化なし。これって温度設定機能が狂ってるんだろ。電話でクレームつける前に、念のため25度に設定。どうかな?

…狂ってません。ちゃんと温度が下がりました。鳥肌立ってます。

不良品でも故障しているのでもなく、単にハイパワーなだけでした。
現在では、なんと窓を半開放した上で冷房しています。この新しい、そして頼もしいM社のエアコンは「冷凍くん」と呼ぶ事にしました。ほな。


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